大成建設、「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を建築物に国内初適用

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、2021年2月に開発し、工場から排出されるCO2を資源とした、CO2排出量収支がマイナスとなるカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」※1を国内で初めて建築物に適用しました。今後、当社は脱炭素社会を実現するため、CO2排出量収支がマイナスとなるコンクリート製品を積極的に普及展開し、社会実装を推進していきます。

これまで当社は、主要な建設材料であるコンクリートについて、CO2の排出抑制と産業副産物の有効利用を促進する目的として「T-eConcrete」を開発し、石材調建材T-razzo※2やトンネル用セグメントT-eCon/Segment※3などのCO2排出量削減に繋がるコンクリート2次製品を構造物へ適用してきました。また、2021年にはコンクリート内部にCO2を固定することによりCO2排出量の収支をマイナスにするカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を開発しました。

そして、この度、当社では2050年カーボンニュートラルの実現に向け、社会実装への第一歩として、自社施設である技術センターにおいて、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」で製作した壁部材を、建築物に初めて設置することといたしました。

「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いた壁部材の概要は以下のとおりです。

1.製造方法、適用場所

二次製品工場で従来のコンクリート製品と同様の工程※4で製造した壁部材を当社技術センター内に新設する実験施設内部の壁部材に適用しました。(写真1参照)

2. 材料の特性

今回使用した材料は、一般的な建物に使用する通常コンクリート(21~24N/mm2)より高い圧縮強度40N/mm2と、優れた施工性(スランプフロー:50cm±10cm)を実現しました。(表1参照)

3. 部材の特徴

通常コンクリートと同様に補強材として鉄筋と鋼繊維を採用しており、部材内部は強アルカリ性を保持しているため、鋼材の防錆に優れます。(表1参照)

4. CO2削減量※5

通常コンクリートで壁部材を製造する場合のコンクリートのCO2原単位を試算すると274kg/m3となりますが、本材料では▲50kg/m3となり、壁材全体としてのCO2排出量を約1.1トン以上削減できました。(図1参照)

表1 T-eConcrete/Carbon-Recycleの特性および部材の特徴

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今後、当社は「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を、CO2排出量収支マイナスとなる「ビヨンド・ゼロ」を具現化する建設材料として積極的な技術開発を引き続き推進し、脱炭素社会の実現に貢献して参ります。

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写真1 技術センター内実験施設への設置状況

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図1 コンクリートCO2原単位の比較

※1 T-eConcrete/Carbon-Recycle:

コンクリート工場の排気ガスから回収した炭酸ガス(CO2)とコンクリート廃材中のカルシウム(CaO)から製造した炭酸カルシウム(CaCO3)を、産業副産物である高炉スラグを使って固めたコンクリート材料。炭酸カルシウムとしてコンクリート内部に多量のCO2が固定でき、コンクリートのCO2収支をマイナスにすることができる。

※2 T-razzo:

高炉スラグなどを用いて、製造過程で発生するCO2排出量を大幅に削減し、低コストで意匠性に優れた天然石材調建材

※3 トンネル用セグメントT-eCon/Segment:

普通セメント(ポルトランドセメント)の代わりに産業副産物の高炉スラグやフライアッシュなどを混合したコンクリートで製造したシールド工事の構造部材

※4 通常コンクリート製造方法:

通常のコンクリート工場では以下の手順でコンクリート製品を製造します。①混練(セメント・骨材(砂や砂利等)・水・各種添加剤を練り混ぜること)、②製造する形に合わせた型枠への打設、③給熱養生(蒸気等により熱を加えてセメントの固化を促す)、④脱型(型枠から外す)、⑤完成

※5 CO2削減量:通常コンクリートCO2原単位 ― カーボンリサイクル・コンクリートCO2原単位で試算され、今回の壁部材におけるCO2削減量の総量は、(274kg/m3-(-50 kg/m3))×3m×0.6m×0.12m×16枚≒1,120kg

 

参照元:PRESS CUBE